セルフマネジメント推進研究会

2026 政策提言 / 全4回の議論より

医療保険制度を「受療中心」から
セルフマネジメント推進へ

国民皆保険の成立から65年。少子高齢化が進み、公的医療保険の給付範囲は見直しの局面に入りました。 病気になったときに家計が壊滅的にならない——その一点を守り続けるために、 その手前で「病気になりにくくする」仕組みを、制度の側に組み込む必要があります。

名称
セルフマネジメント推進研究会正式名称:セーフティーネット機能と保険料負担軽減を両立させるためのセルフマネジメントを軸とした医療保険制度の構造的な変革に向けた研究会
設置
2026年2月
開催
全4回(2026年2月6日 — 2026年8月4日)第4回をもって終了
座長
武藤 正樹日本医療伝道会衣笠病院グループ 理事
委員
10名(座長を含む)委員一覧
成果物
報告書(本編)/概要版/ダイジェスト2026年9月 公開
キーワード
セルフマネジメント SDM(協働意思決定) デシジョンエイド ヘルスリテラシー OTC検査薬 セルフマネジメント給付 自己管理型医療貯蓄口座 医療AI

報告書を読む →提言の骨子を見る →

I

報告書

Report

研究会での議論を取りまとめた報告書および概要版を公開します。どなたでも無料でダウンロードいただけます。

II

研究会について

About

セルフマネジメント推進研究会は、医療保険制度を「受療中心」から「セルフマネジメント推進」へ 転換するための政策提言をまとめることを目的に、2026年2月に設置された研究会です。

1. 設置の背景

コロナ禍で国民は自ら検査し自ら体調を管理する経験を持ち、同じ時期にデジタルヘルスが進展しました。 一方で医療機関の経営環境は厳しさを増し、公的医療保険の給付範囲は見直しの局面に入っています。

2. 目的

セルフマネジメントを進めるにあたり、患者・国民をどう支援するか、制度の何を変えるべきかを検討し、 具体的な政策提言としてまとめること。医療・行政・保険・報道・患者支援の各分野の委員が参加しました。

3. 成果物の取り扱い

成果物は研究会の名義で公表する報告書および概要版です。本サイトは報告書を広く読んでいただくとともに、 各方面からのご意見を受け止める場として設けています。

III

提言の骨子

Proposal

提言は4つの前提のもと、2本の柱で構成されます。詳細は報告書本編をご覧ください。

図1 情報と支援を得て、自分で選ぶ
図2 医療者と共に決める(SDM)
図3 セーフティーネットを守り、予防へ

4つの前提

  1. 前提1 健康格差・所得格差を放置しない社会的弱者を切り捨てる内容としない。国民のヘルスリテラシー向上のための健康教育と、情報発信の強化をあわせて求める。
  2. 前提2 医療保険制度の中核を守る制度の持続可能性を追求する。OTC検査薬の推進と、日本版・自己管理型医療貯蓄口座(仮称)の制度導入がこれにあたる。
  3. 前提3 医療機関の経営改善にも寄与するSDMの診療報酬評価、かかりつけ医機能の評価、セルフマネジメント拠点(仮称)の整備を通じて、病院・診療所等の経営状況の改善にもつながるものとする。
  4. 前提4 時代の変化に応じて制度を変える個人の健康づくりの評価(PAMスコア)、インセンティブの設定、セルフマネジメント給付(仮称)の設定、重症化予防等の選定療養の推進を通じて、制度を変えていく必要があることを示す。

提言 1セルフマネジメントを推進する環境の整備

  1. (1)SDM(協働意思決定)の推進と、それを支えるデシジョンエイドの整備

    選択肢・長所・短所・本人の価値観を整理して選べるようにする。診療報酬上の評価は現在ごく限られている(腎代替療法指導管理料)ため、これを拡充する。あわせてMindsの診療ガイドライン整備の枠組みにデシジョンエイドの開発・公開を組み込み、作成への財政支援を行う。

  2. (2)医療従事者の役割変革と、国民への健康教育の実施

    診療報酬でSDMを評価する際に、デシジョンエイドを用いた実施と医療従事者の研修履行を要件とする。あわせて初等中等教育からの健康教育を制度化し、身近な健康相談を受ける場としてのかかりつけ医機能の強化と両輪で進める。

  3. (3)体外診断薬のOTC化等の環境整備

    治療・予防にOTC薬の適用がある疾患の検査薬は、速やかに一般用検査薬としてOTC化する。自己採血・検体の郵送・針の処理など、使用に伴う法規制の整備もあわせて進める。

  4. (4)社会的基盤の整備とAI技術の活用

    いつでも健康相談できる「セルフマネジメント拠点(仮称)」を、医療機関・健康増進支援薬局のほか、有資格者のいる施設や分野別に実績のある当事者団体を含めて、基礎自治体・事業者の単位で整備する。あわせて生成AIによる健康管理・相談の社会実装に向けた法規制を検討し、国民向けの医療・健康情報サイトの整備と国による認証を行う。

提言 2保険給付範囲の縮小に備える

  1. (1)セルフマネジメント給付(仮称)の創設と、重症化予防に関する保険外併用療養費の拡充

    疾病の治療を前提とした給付範囲を抜本的に見直し、健診・検診・保健指導・予防接種・健康づくり事業を包含する新たな給付を創設する。あわせて、療養の給付とこの新給付の中間にある重症化予防について、選定療養を拡充するなど保険外併用療養費制度の運用を柔軟にする。

  2. (2)個人の健康づくりの体系的評価の導入と、セーフティーネットとしての民間保険等の活用

    英国NHS等で医療費抑制の実績があるPAM(患者活性度)スコアの概念を段階的に導入し、健康づくりの努力を評価してレベルに応じた支援につなげる。あわせて米国のHSAを参考とした日本版「自己管理型医療貯蓄口座(仮称)」の導入を民間保険会社等に要請し、評価に応じて保険者が拠出金へ補助する。社会的弱者への慎重な配慮を前提とする。

本提言は、負担を患者へ付け替えるためのものではありません。 国民皆保険制度を将来にわたって維持するための効率化であり、 その効果が患者本人の利益に還元されることを前提としています。

IV

開催経過

History

2026年2月の第1回から、同年8月の第4回・最終回まで。

  1. 第1回・対面(東京)

    研究会の設置と提言の方向づけ

    設置趣旨と資料の説明。座長に武藤正樹委員を選任。提言を2本柱とする方向を確認した。

  2. 第2回・オンライン

    意思決定支援・検査機会・スイッチOTC

    意思決定支援とディシジョンエイド(中山委員)、エイズ流行終結2030に向けた新たな検査機会(岩橋委員)、生活習慣病治療薬のスイッチOTC化(武藤座長)。

  3. 第3回・オンライン

    医療貯蓄口座とAI活用

    米国のヘルスセービングアカウント(小坂委員)、医療分野におけるAIの活用、報告書案の説明と討議(一戸委員)。

  4. 第4回・最終回・オンライン

    報告書の取りまとめ

    報告書案の討議と取りまとめ。研究会を終了した。

V

委員

Members

座長のほか、委員は五十音順(敬称略)。

役職氏名所属機関
座長武藤 正樹社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ 理事
委員飯野 奈津子日本専門医機構 理事(元 NHK解説主幹)
委員一戸 和成学校法人 東京女子医科大学 理事(医療部門担当)/杏林大学医学部 客員教授(元 厚生労働省保険局医療課課長補佐)
委員岩橋 恒太特定非営利活動法人 akta 理事長
委員唐澤 剛社会福祉法人サン・ビジョン 理事長(元 厚生労働省 保険局長)
委員小坂 雅人東京海上日動火災保険 個人商品業務部
委員田村 誠国際医療福祉大学 特任教授(元 中医協 専門委員)
委員俵木 登美子一般社団法人くすりの適正使用協議会 理事長(元 厚生労働省 安全対策課長)
委員中山 和弘聖路加国際大学 教授
事務局―フェアリンク株式会社

委員からのメッセージを読む →

VI

委員からのメッセージ

Message

研究会への思いを、委員よりいただき次第、順次掲載してまいります。

武藤 正樹

武藤 正樹座長ごあいさつ

「セルフメディケーション」という言葉を今日的な意味で使い始めたのは、実は日本人です。1950年代の後半、配置薬を意味する言葉としてこの語を発案したのは石坂哲夫(東京大学薬学部・日本薬学会事務局長)で、それを広めたのは曽我正雄(全国配置家庭薬業協会長)でした。英語圏では19世紀からこの言葉が使われていましたが、その意味は「アルコールや薬で精神状態を紛らわす」というもので、いまとは異なります。世界保健機関(WHO)が国際薬剤師連盟(FIP)と共同で、「個人が自分で認識できる症状や慢性疾患、再発する症状に対して、安全性・有効性が保証された医薬品を適切に使用して自ら対処すること」と定義したのは、それよりずっと後のことでした。こうしてみると、石坂・曽我らがこの言葉を今日的な意味で用いたことは、まさに慧眼だったと言えます。

それから70年近くを経て、私たちはいま、自ら健康を管理するという営みを、制度の側から支える段階に来ています。社会保障の目的は、病気になったときに家計が壊滅的にならないようにすることだと考えています。その一点を守り続けるためには、その手前で病気になりにくくする仕組みを、制度に組み込む必要があります。

2026年2月から4回にわたって開かれた本研究会は、学びの多い会でした。医療・行政・保険・報道・患者支援と、専門の異なる委員の皆さまとセルフマネジメントのあり方を確かめ合えたことは、大きな収穫です。ちょうど保険外併用療養という考え方も出てきている時期であり、本報告書が時宜にかなったものとなることを願っています。

一戸 和成

一戸 和成

現下の政治状況も含め、公的医療保険の給付範囲が縮小されるなかで、個人の健康づくりのための「セルフマネジメント」がこれまで以上に重要な時期を迎えています。そのため、今の医療保険制度のあり方も含めて何か提言できないかと考え、この研究会をお声掛けしました。健康保険法は疾病の治療を給付の対象としていますが、この考え方を維持するだけでは、時代の急激な変化に追いついていけません。その際、国民が「セルフマネジメント」を実行するためには、自身で診断し、治療できる環境がなければなりません。——こうしたことを実現するため、OTC医薬品のみならずOTC検査薬へのスイッチの促進や使用に関する環境整備を提言に含めたのは、そうした考えからです。また、公的医療保険の給付範囲の縮小という現実に国民が直面したとき、備えとなる制度を今のうちに設計しておきたいとも考え、合わせて提言しています。

小坂 雅人

『保健医療2035提言書(2015年6月)』では、「公的医療保険の範囲から外れるサービスを患者の主体的な選択により利用する際に、活用できる新たな金融サービス、寄付による基金など公的保険を補完する財政支援の仕組みの検討も重要」とされています。「新たな金融サービス」としては民間保険や貯蓄などが想定されますが、本提言書でお示しした『自己管理型医療貯蓄口座』は「公的保険を補完する財政支援の仕組み」を検討するうえでも有力な選択肢と考えられます。

田村 誠

田村 誠

人口高齢化が進み、医療従事者の不足・逼迫が一層深刻になる中、国民・患者が自らの健康に主体的に向き合うセルフマネジメントは、今後進むべき方向であることは間違いありません。本報告書には、その実現に向けて、健康教育、SDM、OTC検査薬、AIの活用、支援拠点や制度の整備など、具体的な政策提案が随所に盛り込まれています。多様な背景を持つメンバーとの議論やメールでの意見交換は、私自身にとっても大変勉強になりました。本報告書が行政、医療、産業界をはじめ、さまざまな場で活用され、今後の議論と実践につながることを願っています。

俵木 登美子

俵木 登美子

2040年問題を迎え撃つために、健康寿命の延伸が叫ばれて久しくなっています。また、医療保険財政の持続可能性も喫緊の課題となっています。そのような中、骨太の方針2026に初めて「攻めの予防医療」が医療政策の柱として書き込まれました。国民任せでなく、国、保険者、企業が介入して健康寿命を延ばしていこうということです。この検討会では、個人個人のセルフマネジメントの推進と保険給付範囲の縮小に備える新たな制度についての提案を議論しました。患者に個別最適な医療を届けるために医薬品についての信頼できる情報を届ける仕事をしておりますが、患者のShared Decision Makingを支えるための環境整備が進み、誰もがセルフマネジメントを自然にできるような国になることを期待しております。

中山 和弘

中山 和弘

自分で考え、判断し、決められる「自己決定」は、納得感や安心感、ひいては幸せにもつながります。私は本研究会で、セルフマネジメントを自己責任にせず、患者・国民が必要な情報と支援を得ながら、自分に合った選択に参加できる制度基盤を提案しました。具体的には、「お・ち・た・か」(オプション〈選択肢〉、長所、短所、価値観)を共通言語として、ディシジョンエイドの整備、SDM(協働意思決定)の診療報酬上の評価、医療者教育、健康教育、ヘルスリテラシー向上を結びつけることです。この提言が、誰もが治療や予防、健康管理について、必要な情報と支援を得ながら納得して選べる環境づくりにつながることを期待しています。

飯野 奈津子

長年、医療・厚生労働分野の取材を通じて、各国の医療制度にも接してきました。その中でセルフマネジメントを推進するシンガポールでは、病気にならずに健康に過ごそうという国民の意識が強く、「自分で選べることが幸せだ」と答える人が多かったことが印象に残っています。医療費を自分で積み立てる制度とあわせて、小学校の頃から徹底した健康教育が行われ、医療に関わる透明性の高い情報公開と困った時に専門家が相談に応じる体制も整えられています。日本でもそうした総合的な取り組みを進めてセルフマネジメントを推進する時期に来ていると感じます。今回の提言が取り組みを進めるきっかけとなればと期待しています。

唐澤 剛

唐澤 剛

私が厚生省に入省した1980年頃は、医師と患者の関係で最も重要なものは、相互の信頼関係であると言われていました。1987年には、厚生省「国民医療総合対策本部中間報告」において、医師から十分な説明を受け、納得した上で治療が行われることが望ましいというインフォームド・コンセントという考え方が紹介されました。

これらの考え方は今日でも重要なものですが、高齢化、情報化、技術進歩等に伴って生じている様々な課題に対応するため、患者も主体的に健康づくりに参加し、医療者と患者が共に治療・予防の意思決定(SDM)を行う「セルフマネジメント」を推進することが求められています。

このため、本報告書では「セルフマネジメント」を推進する環境の整備と「セルフマネジメント」支援への制度の再構築を提言しています。提言の具体的な事項は、ぜひ報告書の内容をご参照いただければと思います。同時に、提言に当たっては、健康格差・所得格差を放置せず社会的弱者を切り捨てないこと、医療保険制度の中核を守り持続可能性を追求することを前提としていることを付言させていただきます。

VII

よくあるご質問

Q&A

報告書の要点を、質問の形で短くまとめています。

Qセルフマネジメント推進研究会とは何ですか。

医療保険制度を「受療中心」から「セルフマネジメント推進」へ転換するための政策提言をまとめることを目的に、2026年2月に設置された研究会です。座長は武藤正樹。医療・行政・保険・報道・患者支援の各分野の委員が参加し、2026年8月4日の第4回をもって全4回の議論を終えました。

Qなぜいまセルフマネジメントが必要なのですか。

少子高齢化と財政構造の変化により公的医療保険の給付範囲は見直しの局面に入り、医療機関の経営環境も厳しさを増しています。社会保障の目的である「病気になったときに家計が壊滅的にならないこと」を守り続けるには、その手前で病気になりにくくする仕組みを制度に組み込む必要があります。国民皆保険を将来にわたって維持するための効率化であり、負担を患者へ付け替えるためのものではありません。

Q提言の要点は何ですか。

提言は2本柱です。提言1「セルフマネジメントを推進する環境の整備」は、SDM(協働意思決定)の推進とデシジョンエイドの整備、医療従事者の役割変革と国民への健康教育、体外診断薬のOTC化等の環境整備、社会的基盤の整備とAI技術の活用の4施策です。提言2「保険給付範囲の縮小に備える」は、セルフマネジメント給付(仮称)の創設と重症化予防に関する保険外併用療養費の拡充、個人の健康づくりの体系的評価の導入とセーフティーネットとしての民間保険等の活用の2施策です。いずれも健康格差・所得格差を放置しないことを前提としています。

QSDM(協働意思決定)とは何ですか。

患者と医療者が、選択肢・長所・短所・患者の価値観を共有したうえで治療方針を協働して決める進め方です。本人の価値観を確認しないまま治療が行われ、患者が後悔する状態は「沈黙の誤診」と呼ばれます。本研究会は、SDMを支えるツールであるデシジョンエイドの整備と、SDMに対する診療報酬上の評価を提言しています。

Qセルフマネジメント給付とは何ですか。

現行の医療保険は疾病の治療に対してのみ給付を行う建て付けですが、予防・重症化予防・セルフマネジメントの部分についても新たに保険給付を設定するという提言です。健康保険法の目的規定そのものの見直しにつながる論点として位置づけています。

Q自己管理型医療貯蓄口座(ヘルスセービングアカウント)とは何ですか。

医療目的の資金を税制優遇を受けながら積み立てる口座で、米国のHSA(Health Savings Account)がモデルです。保険給付範囲が縮小していくなかで国民がいきなり自己負担に放り出されないためのセーフティネットとして、本人の積立に対し、健康づくりの評価に応じて保険者が補助を拠出する日本版の制度設計を提言しています。

Q報告書はどこで読めますか。

本サイトの「報告書」からダウンロードいただけます。報告書(本編)はPDF・全36ページ、要点をスライド形式でまとめた概要版はPDF・全9ページ、さらに短いダイジェストはPDF・全4ページで、いずれもどなたでも無料でご利用いただけます。

VIII

ご意見をお寄せください

Contact

報告書の内容について、ご意見・ご質問をお寄せいただけます。いただいた内容は事務局を通じて委員に共有いたします。

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